昭和から100年。私たちは何を「フロンティア」と呼び、そこに何を求めてきたのでしょうか。
国立公文書館で開催中の特別展をきっかけに、私は日本の科学技術の歩みをたどってみました。政策の源流に触れた後は、その「現場」である国立極地研究所へ。
宇宙、海洋、そして極域。昭和の情熱が令和の今、どう結実しているのか。二つの展示から見えてきた「現在地」を振り返ります。

国家の意思が刻まれた「フロンティア」の原点

南極探検は、白瀬矗(しらせ のぶ)氏が1910(明治43)年に南極を目指し、学術探検として日本を出発したことがはじめとされています。国立公文書館の展示にあった年表によれば、2年後に南極のロス湾に到着したとあります。その場所を大和雪原(やまとゆきはら)と名付けたとのことです。この場所は現在の昭和基地とは反対側であるとの説明が極地研の模型を指しながらありました。


国立公文書館においては、白瀬矗氏が大正10年に飛行機で南極探検に要する費用を請願する資料が展示されていましたが、この時代の航空機はどのようなものであったのかも興味津々です。

敗戦からの再出発と、昭和基地「開設70周年」の重み

1955(昭和30)年に南極会議において、日本は南極観測の参加希望を申し入れたそうですが、第二次世界大戦で敗戦国であり、非常に寒い気象条件の悪い場所を基地として指定されたとのことでした。これが現在の昭和基地であり、2026年1月で昭和基地開設70周年を迎えたとのことです。
南極の昭和基地は東京から14,000キロ離れています。

最初の昭和基地での南極観測についての閣議決定がなされたことや当時の文部大臣が「未踏未知の目的地」とあいさつした原稿が国立公文書館に展示されていました。南極調査船宗谷が未踏未知の目的地へ出発したのはその2年後のことでした。

1961(昭和36)年には南極条約に署名。法律を学ぶ中で条約の署名ということは知っていましたが、実際の条約の実際のご署名というものをここで初めて目にすることとなりました。

タロ・ジロの時代から「生態系保護」へ

映画の「南極物語」の二匹の犬、タロ・ジロが有名ですし、かつては、一酸化炭素中毒にならないようカナリヤも持ち込んだ話がありましたが、現在は、生態系保護の観点から生き物を大陸から南極大陸に持ち込むことは許されていないとのことです。
したがって南極に生きるのは、元来から生息しているペンギンやアザラシなどの動物です。

消える「5004」――砕氷艦しらせ、運用の大きな転換点

科学館の展示で私の目を引いたのは、歴代の砕氷艦たちの姿です。船首には、まるでナンバープレートのように艦番号が付されています。
  ・ふじ     5001
  ・しらせ    5002
  ・現在のしらせ 5003
しかし、ツアーの解説の中で「今後、5004はなくなるかもしれない」という、えっ?という一言がありました。あんなに過酷な氷の海に挑む船が、いなくなってしまうのか?
気になって調べてみたところ、そこには日本の南極観測体制における大きな歴史的転換点がありました

・「しらせ」後継船の所有及び運用主体は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)とし、ヘリの運用主体は国立極地研究所とする。
・ 防衛省・自衛隊は、氷海航行や氷上輸送等に必要な海上自衛官の派遣等により、引き続き協力を行う。

令和8年4月16日 第1回南極地域観測統合推進本部輸送計画委員会 次期輸送体制検討小委員会 資料3

この案がまとまり、この6月の本部総会で正式決定される方向で、政府内で検討が行われています。自衛隊の艦船でなくなることから艦番号がなくなるということだったようです。

越冬隊から見た「日帰り隊」と、一人きりになれる個室の価値

南極・北極科学館でガイドの方は、観測隊員として何度も南極へ行ったことのある極地研OBの方でした。南極に数か月滞在して帰る隊員のことを、越冬隊の方は『日帰り隊』と呼ぶのだそうです。1か月にわたる極夜の夏を過ごす越冬隊のメンバーからみると軽いと思うのかもしれません。
かつて南極観測隊長をされた先生とお仕事をご一緒した際、南極での様々な苦労などをお伺いしたことがあり、同僚でも南極観測隊に行った人が何人もいました。南極での生活は狭いながらも個室が用意されているとの説明を受けましたが、極寒での生活、業務上のプレッシャー、家族と離れ離れの生活など様々な至難と戦いながら過ごすわけですから、一人でいる時間は大事なことなのですね。南極滞在は貴重な経験ですが、お話を伺えば伺うほどに体力的にも精神的にも強くないと難しく、誰にでもできることではないということを改めて痛感しました。

宇宙・極地・海洋が交差する、シームレスな「探査」の未来

JAXA宇宙探査イノベーションハブとは、ミサワホーム、国立極地研究所等と共同で、南極の昭和基地周辺にて月面や火星での居住空間を想定した「南極移動基地ユニット」の実証実験を行ったこともあり、国立公文書館での展示はシームレスに検討が進められているのです。JAXA「南極移動基地ユニット、連結完了と実証実験開始について」

今回私は国立公文書館と国立極地研究所を回り、極域科学について理解を深めるとともに、極域科学の研究と海洋科学・宇宙科学のシームレス関係が構築されることもわかりました。

GWのおすすめ

歴史に触れるなら国立公文書館

現場の熱量を感じるなら極地研、JAMSTECやJAXAへ


このGW、あなたも自分だけの「フロンティア」を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。

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