令和6年1月1日能登半島地震が発生し、8月8日に初めて南海トラフ地震臨時情報が発令されました。大きな震災が増え、迫りくるものとなっています。災害時には迅速で正確な情報伝達が求められることとなります。そこで、これまでの震災における情報伝達の変化を振り返りながら、時代にあった震災時の情報伝達の方法について考えます。

昭和では人の目で確認

1978年6月12日夕刻、宮城県沖地震が発生。私は、突然の大きな地震に小学校の桜の木にしがみつきながら、目の前で木造校舎が倒れる様子を見ていました。停電・断水も発生し、情報はラジオのみ。固定電話しかない時代では、安否や家屋等被害の状況は人の目視以外に方法がなく、暗くなったら確認作業は終了。町内で家屋やブロック塀の倒壊、隣町の北上川で橋が落ちる等、甚大な被害であったことは時間を経て知りました。

平成では新たな技術が続々と

1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生。それを契機に全国約800か所に地震観測施設(Hi-net)が整備され、2007年には気象庁を通じて緊急地震速報が配信されるようになりました。緊急地震速報は、「既に発生している地震を検知して地震波より早い電気信号により揺れを知らせるという技術【1】」ですが、「地震で大きく揺れ始める直前に、強い揺れがやってくることを伝える情報」と思っている人が多いかもしれません。
2011年3月11日、東日本大震災が発生。図1のように宇宙からの先進レーダ衛星「だいち2号」搭載のLバンド合成開口レーダという装置により、電波を地表面に照射し、地表面から反射される電波を受信することで得られた衛星画像(図2)が、リアルタイムの土地の変化や津波の様子等を教えてくれます【2】。太陽の光に依存しないため、昼夜を問わず観測が可能であり、地図や過去の衛星写真との突合により被害状況が把握できます。被災地では、人工衛星「きく8号」の衛星通信により、90cmのポータブルアンテナ設置によりインターネット環境の提供が可能となりました【3】。携帯電話が地震直後は全くつながらない課題に直面しましたが、使用可能となった段階では安否確認に役立ちました。
2016年4月14日発生の熊本地震では、地震直後も携帯電話がつながり、SNSを活用した情報共有・安否確認が進み、地上デジタル放送のテレビの画面ではリアルタイムに災害の情報がLアラートとして流れる【2】ようになりました。

図1:だいち2号の照射イメージ 図2:「だいち2号」に搭載された、Lバンド合成開口レーダが観測した浦安市周辺©JAXA(著作権の関係で掲載なし)

令和では、さらに技術が進化

現在、緊急地震速報は携帯に加え、テレビや防災無線からも通知され、自治体からの避難情報などもLアラートでリアルタイムに通知されます。被災自治体は、「だいち2号」の緊急観測により最短2時間で実際の被害状況を把握することができ、能登半島地震では、その技術が活用【5】されました。2024年7月1日に打ち上げた「だいち4号」が約6か月後から同時運用される予定であり、こちらも精度が上がることが期待されます。

科学技術コミュニケーションがヒントを生み出す

震災における情報伝達については、課題解決により改善され、終わることがありません。課題解決には、緊急地震速報やLアラートなどは現場のニーズを踏まえたもの、技術開発をする中でその技術の応用可能性という気づきから生まれるものがあり、人工衛星を活用した災害状況の把握などは後者の例です。国内外の複数の機関の科学者コミュニティのコミュニケーションを通じて進歩してきています。
国の研究機関の研究所公開やサイエンスカフェでは、科学技術コミュニケーターが、研究の面白さや一般の人々の疑問や期待を研究者や技術者に伝えることで、科学と社会の間に双方向のコミュニケーションを生みだしています。みなさんからの質問やコメントが、科学者が気づいていない視点や思いがけない発想のヒントとなり、未来の情報伝達手段の課題解決の進歩の一助になるかもしれません。

参考文献

1】「防災科研ニュース」 2007年9月号

https://www.bosai.go.jp/sp/information/news/pdf/k_news161.pdf(2024年9月14日閲覧)

2】JAXA宇宙からの災害監視 陸域観測技術衛星2号「だいち2号」災害事例集

space_application_for_disaster_monitoring.pdf (jaxa.jp)(2024年9月14日閲覧)

3】JAXAサテナビ「「きく8号」が打上げから10周年」

https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/news/2016/12/18/373/index.html (2024年9月14日閲覧)

4】情報通信白書平成29年版

総務省|平成29年版 情報通信白書|熊本地震とICT利活用 (soumu.go.jp)  (2024年9月14日閲覧)

5】国土地理院「だいち2号」観測データの解析による令和6年能登半島地震に伴う地殻変動(2024年1月19日更新) | 国土地理院 (gsi.go.jp)(2024年9月14日閲覧)

この記事は、2024年9月北海道大学CoSTEP20期選科Bの課題(高校生向けの記事)として作成したものです。