グリーンEXPOの通年パスを購入し、初日と最終日はサイエンスコミュニケーションを共に学んだ北海道大学CoSTEPの同期と対話型鑑賞を楽しみながら回ることにしました。開幕前の予習の一環として、国立国会図書館で開催されている令和8年度企画展示「冒険する園芸‐庭先から世界へ」を観てきました。

直木賞作家・朝井まかてさんの講演会と事前読書

展示に先立ち、朝井まかてさんの講演会があるとのことで、今回、江戸園芸小説であるデビュー作『実さえ花さえ』を読んで参加しました。朝井まかてさんは直木賞作家で、植物学者・牧野富太郎を描いた小説『ボタニカ』の作者としても知られています。『実さえ花さえ』は、江戸時代の生活や社会などがわかる非常に興味深いもので、講演会が楽しみになりました。
講演会では、国立国会図書館に収蔵されているさまざまな蔵書を投影しながら進められ、

  • 江戸時代の屋敷の庭先の植物やその時代背景
  • 世界のプラントハンターからは、どのように見られていたのか
  • 世界へ向けた日本の植木のカタログはどのようなものであったか

など、非常に幅広く、興味を引かれるお話がありました。
朝井先生のファンも多かったのではないでしょうか。
講演会の後半では、質疑応答が行われ、朝井さんのお人柄が伝わる回答もありました。最後に「朝井先生にとって読書とは何か」との質問があり、

「今、自分が生きているということ」

という印象的なお答えがありましたが、国立国会図書館のイベントらしく、本と読書という視点に力点が置かれていることが伝わってきました。

1つの展示を深く楽しむ「5つの視点」

講演会終了後には、展示を楽しみました。国立国会図書館の貴重な蔵書が、「園芸」という切り口でテーマに応じて公開・展示されています。資料を見てもらうことや、本と読書への理解を深めることにとどまらず、私は今回の展示と講演会を通じて、異なる視点から資料を見ることで生まれるコミュニケーションに興味を持ちました。
この展示を通じて感じたこととしては、こんな視点です。

1.農学・園芸学の見地から 時代や環境に応じた植物の栽培や品種改良、人と植物の関係。
2.民俗学・歴史時代考証から 当時の人々の暮らしや文化、植物に対する価値観。
3.浮世絵から 版画という美術作品としての価値に加え、江戸時代の植物や園芸文化を伝える資料として歴史的価値。
4.ボタニカルアートから 写真がなかった時代に、植物の特徴を正確に伝える図像。現代のインフォグラフィック(情報を視覚的にわかりやすく伝える表現)、とりわけサイエンスグラフィックとしての機能を持つ歴史的資料。


5.朝井まかてさんの小説から そうした歴史や文化、人々の営みを物語として描き、小説として伝える面白さ。

「対話型鑑賞」でさらに広がる世界

文学や読書、史料の紹介がメインではあると思いますが、異なるバックグラウンドを持つメンバーと対話型鑑賞をしたら、展示の意図を踏まえながらも見る人の専門や関心によって思いもかけない発見が生まれるのではないか。
研究者を目指し、CoSTEPでインフォグラフィックを学んだ仲間からは、ボタニカルアートに対して、わかりやすく正確に伝えることの大切さのようなことが語られる気がしますし、民俗学や浮世絵に興味がある私は、江戸時代の風俗や町人の日常生活のような話をするような気もします。明治時代の日本の植木カタログも、美術品に匹敵するほど精巧でした。


きっととても楽しい鑑賞になりそうな、そんな気がしました。

展示は今後、関西館でも開催されるようです(2026年11月13日~11月28日)。

通常の利用は18歳以上ですが、この展示は満18歳以下でも観ることができるとのこと。
ご関心のある方はぜひ足を運んでみてください。

国立国会図書館 令和8年度企画展示

冒険する園芸‐庭先から世界へ